宇宙を飛び交う高エネルギー(ギガ(10億)電子ボルトGeV=10^9eV以上)の放射線である「宇宙線」は、その発見からまもなく100年を迎えるが、未だその起源は解明されていない。宇宙線の起源を突き止め、また宇宙線はなぜ高いエネルギーを獲得するにいたったか(宇宙線の加速メカニズム)を解明する上で決定的に重要なのが、宇宙線の原子核組成である。とりわけ、宇宙線のエネルギースペクトルに変化の見られる10^<15>eV付近での宇宙線組成は、宇宙線起源解明にとって本質的に重要である。これを研究するために、我々のグループでは高山での宇宙線観測を行っている(ボリビア・チャカルタヤ山観測所)。地球に到来した宇宙線(一次宇宙線)は大気と相互作用して「空気シャワー」を生成するが、これが我々の直接の検出対象である。そして空気シャワーの大気中での発達は、一次宇宙線の核種に依存しているため、空気シャワーの精度良い観測により、宇宙線の原子核組成を測定することができる。本研究は、空気シャワー観測の精度向上のための大気モニタシステム開発を目的とするものである。すなわち、レーザを大気中に射出し、その反射光を検出するLIDAR(Llght Detection And Ranging)を製作し、空気シャワー実験との連動観測を行う。平成18年度の研究では、このLIDARシステムの開発を完了した。LIDARシステムは、パルスレーザ射出装置、光検出のための光電子増倍管、レーザ射出角度と光電子増倍管角度調節のためのステッピングモータ、信号記録のためのデジタルオシロスコープ、そして全体を制御するコンピュータによって構成される。現在までに装置の設計と組み立て、ソフトウェアの開発は完了しており、システムとして既に観測可能な状態にある。今年度は、実験を行うボリビアのチャカルタヤ山観測所へ装置を輸送し、実際の観測を行う予定である。
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