年度当初に予定されていたLHC加速器の450GeVでの運転は本年度は実施されずに20年度に見送られた。LHC衝突によるLPM効果の実証ははたすことができなかったが、SPS加速器の低エネルギービームを用いた装置性能の検証に成功した。SPS加速器のエネルギー(50-200GeVの電子)では本来顕著なLPM効果は期待されない。本試験によって電子によるカスケードシャワーを観察したところ、実験結果とモンテカルロシミュレーションの予想は±1%の精度で一致した。これは、1TeV領域での約10%のLPM効果を検証するために十分な性能である。 前年度に名古屋大学で実施したレーザー較正システムを実施計画通りに簡素化し、SPS加速器での試験実験とLHC加速器に設置した際にも使用できるようにした。SPS加速器で取得した200GeV以下の低エネルギービームでの較正データは、同時に取得したレーザーデータによってLHC相当の7TeVの高エネルギーまで拡張が可能になった。また、LHC環境においてもレーザー試験が実施できるように機器を用意した。これによって、SPSとLHCの測定環境の違い(ケーブル長等)をレーザーのデータを用いて補正できるようになった。また、独立の研究から、LHCfの実施プランによってはシンチレータの放射線による劣化の影響が無視できない可能性があることが明らかになってきた。この場合、現場でのレーザーによる補正が有効になる。
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