一般相対論の数値解法である数値相対論の主な活躍の場であるところの、ブラックホール形成・重力崩壊・そして膨張宇宙におけるそれらの性質に関する研究を行った。以下では、雑誌発表論文に基づいて研究実績の内容について述べる。 1. 一般相対論的重力の基礎的問題における数値相対論の大きな発見として重力崩壊における臨界規象がある。われわれは臨界現象の解析的理解へ向けて、厳密に扱うことのできる自己重力系を提案した。さらに臨界現象の理解の核となる臨界的な自己相似解の巌密な表式を与えた。 2. 近年の複数の独立な精密観測によって、われわれの宇宙は暗黒エネルギーに満たされており加速膨張膨張していることが明らかになってきた。この状況でブラックホールはどのように振舞うのかを考えることは重要である。われわれはブラックホールが自己相似的に成長する可能性を最も簡単な暗黒エネルギーモデルにおいて数値的に検証した。その結果ブラックホールが自己相似的に成長することを発見した。 3. ブラックホールは量子論的な効果により蒸発する。膨張宇宙におけるブラックホールの蒸発を考えることは、初期宇宙に誕生したと考えられる原始ブラックホールの蒸発率を評価する上で重要になってくる。われわれはブラックホール蒸発によるエネルギー放出率の宇宙膨張に由来する補正を計算・評価し、現在の宇宙ではこの補正が非常ら小さいこと、そして原始ブラックホールが誕生した直後ではこの補正が非常に大きくなりうることを示した。 本研究の成果報告を含む講演を、国際会議および日本物理学会大会で計五回講演を行った。五本の論文を国際的に著名な学術雑誌に投稿し掲載された。
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