本研究の主測定モードであるB^0→η'η'K_s崩壊は未発見であるが、その崩壊分岐比を1×10^<-5>と仮定した場合、2008年までに蓄積された約6.57億個のBB中間子対生成事象からは1066個生成されると期待される。しかし実際に再構成可能な事象はこのうち数%である上、背景事象を考慮した事象選択を行う必要がある。前年度までの解析より本測定モードにおける主要な背景事象は偶然背景事象によるものである事が解っている為、実データで運動学的にシグナルを含まない領域を背景事象領域と定義し、その量と性質を調べた。B^0→η'η'K_s崩壊のサブ崩壊モード(γγ)(γγ)が最も高い統計有意度を示し、(3π)(γγ)及び(3π)(3π)モードがそれに続く事がわかった。しかしこれらのモードにより期待される統計量は当初予定されていた(ργ)を含む3×3の組み合わせのうち15%に過ぎず、従来と同様の事象選択を行った場合期待される事象数は約3個となり、崩壊分岐比の上限まで考慮したとしても事象の発見及びCP非対称度測定には不十分である。したがって、本測定においてはpγモードを特に改善する事が必須である事が判明した。(ργ)(ργ)モードにおいて従来と同様にFisher Discriminantを用いた事象選択を行った場合、期待される事象数は約8個、背景事象数は3800に及ぶ。従来はこのような複雑な崩壊トポロジーを持つ事象の再構成、改善は困難だったが、pの偏極度分布など本モード特有の力学的変数を新たに用いたり、人工的ニューラルネットワークを利用した多変量解析を行い、変数間の相関を考慮したりする事で効果的なシグナル選別を行った。最適化の結果、シグナル13事象に対し背景事象1200とシグナル数を増やしながらSIN比が5倍向上する著しい改善を見た。これにより10本以上に及ぶ荷電及び中性粒子より構成される事象を、多変量解析を用いて再構成する方法を確立した。しかし背景事象の多さから本解析は現状の統計量ではCP非対称度測定には不十分である事も又判明した。
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