1.横方向エネルギー損失運動量(missing Et)の性能評価 アトラス実験におけるmissing Et測定の性能評価(エネルギー分解能、スケール並びにテール)をフル検出器シミュレーションを用いて行った。missing Etの測定性能は主にカロリーメータの性能によって決定されることから、カロリーメータのエネルギー補正並びにクラック領域や不感物資におけるエネルギー損失がmissing Etに及ぼす影響を調べた。前方のクラック領域(η=3.2)に非常に高い横方向運動量をもったジェットがある場合や非常にエネルギーの高いミューオンの飛跡が誤って構成されてしまった場合(ジェットがカロリーメータ後方に漏れてミューオン検出器にヒットを作ってしまったため生じる)に、missing Etの測定が著しく劣化することを示した。 このような事象がどの程度missing Etのテールを生じ、超対称性粒子発見におけるシリアスなバックグラウンドとなるか調べるため、現在統計をあげて研究をすすめている。 2.Wボソン事象を用いたmissing Et測定の検証方法の開発 最終的にmissing Etの測定性能は実データを用いて評価しなければならない。 このため生成断面積の比較的大きいWボソンがレプトンとニュートリノに崩壊する事象においてWボソンの横方向質量の幅とピーク位置からmissing Etの分解能とスケールを決定する手法(テンプレート手法)を開発し、この有用性を示した。 またこの手法において、Wボソン横方向分布のモデリングとトップ対のバックグラウンドが主な問題であることを示した。現在はこれらの問題解決とその統計誤差の推定方法について研究を行っている。
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