本年度は、これまでの年度に引き続き、ガンマ線バースト(GIB)の放射機構を探ることで、その中心天体やジェットの構造に対する考察を行った。また、我々の銀河系内にある超新星残骸や超高エネルギーガンマ線天体の観測から、宇宙線加速機構に対する知見を得た。おもな成果は次の通りである。 1. GRBよりもソフトだが起源は同族と考えられる天体現象であるX-ray flashおよびX-ray rich GRBについてのデータを解析し、X-ray flashのX線残光の性質はGRBのものと異なることを示した。 2. GRBの早期X線残光に見られる緩やかな減衰期のふるまいを説明する新たなモデルを提唱した。さらにこのモデルはこれまでにSwift衛星によって得られた幾つもの観測結果を無矛盾に再現できる可能性があることを指摘した。 3. 超高エネルギーガンマ線未同定天体HESS J1745-303をX線で追観測し、この天体における電子加速が非効率的であること、ガンマ線は陽子起源による放射である可能性が高いことを示した。CTB37Bという天体についても同様の結論に至った。 4. RX J1713.7-3946に代表される若い超新星残骸のGeV-TeV帯域のガンマ線の放射機構について考察し宇宙線加速の非線形モデルの枠組みでは、ガンマ線の放射機構はニュートリノ観測と比較することではじめて同定することができることを示した。 5. 2次元Particle-in-cellコードを用いて無衝突衝撃波の数値実験を行い、高マッハ数の場合では1次元コードに比べて電子波乗り加速の効率が落ちること、低マッハ数の場合でも波乗り加速が起こりうることをそれぞれ指摘した。
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