WMAP衛星による宇宙背景放射の非等方性の観測により、インフレーション宇宙論がほぼ確かめられました。次のステップは、どのインフレーションモデルが実際に起きたのかを決定することです。そのヒントとなりうる観測結果が示唆されました。原始密度揺らぎのスペクトル指数が、大きなスケールから小さなスケールになるにつれて一を跨いで急速に小さくなることです。このような密度揺らぎの性質を説明することは一般に極めて難しいです。私は、超重力理論での(スムーズ)ハイブリッドインフレーションが自然にそのようなスペクトルを説明出来ることを示し、生成される密度揺らぎを数値計算により正確に求めました。また、この際に起きる共鳴現象のために、あるスケールの揺らぎが増幅され原始ブラックホールが形成されうることを示しました。 これまで行われてきたコスミックストリングの研究のほぼ全てで、テンションは時間に依らないと仮定されてきました。しかしながら、振動する場との結合がある場合やブレインワールドモデルにおいては、一般にテンションは時間依存性を持ちます。この新しいクラスのストリングに初めて着目し、宇宙における進化や構造形成への影響を議論しました。まず、テンションに時間変化がないときと同じように、系がスケーリング則に落ち着く事を解析的に示しました。また、宇宙背景放射の非等方性の観測や大規模構造の観測から、これらのテンションに対する制限を与えました。次に、ニュートリノの質量やウォームダークマター(WDM)の質量に対する考察を行いました。ニュートリノやWDMの質量の絶対値については、それらのfree streamingによる宇宙の大規模構造への影響を考察することにより一番厳しい上限が得られます。しかしながら、これらの制限は、初期の密度揺らぎとしてインフレーションから作られたものだけを考えることにより得られておりますが、ストリングから作られる揺らぎを考慮することにより、制限が緩和される可能性があります。私は、解析的・数値的両方の手法により、ニュートリノの質:量に対する制限はほぼ変わらない一方、WDMの質量に対する制限は大きく緩和されうることを示しました。
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