研究概要 |
初年度は基礎的なデータを集め、問題点を整理することからはじめた。光崩壊のヘリシティー振幅の実験の現状について、Δ→Nγの大きな振幅、N(1440)→Nγの振幅、N(1535)(J=1/2,P=-1)の小さい振幅、N(1520)(J=3/2,P=-1)も他と比較して異常に大きなヘリシティー振幅を持つことが問題である。これらの問題は、U(12)分類形式ではクォークとγの相対論的な結合の効果と相対論的状態(カイラル状態)との混合により、説明できる可能性が明らかになった。特にN(1440)の光振幅は非相対論的E状態とカイラルF状態の混合状態であり、それに相対論的なクォーク相互作用の効果を併せて説明できることが分った。N(1440)をU(12)形式の相対論的状態であるとする説明に、光崩壊の観点から有力な証拠が得られる可能性があり、慎重に検討を進めている。同時にN(1535)の比較的小さい光振幅は、崩壊幅が広くて観測にかからない相対論的G状態N(〜1250)との混合を考えれば説明出来る可能性がある。この混合によりJ=1/2のN(1535)の方がJ=3/2のN(1520)よりも質量が大きいこと、N(1535)の幅が狭く、しかもNπに比してNηに強く結合する事実を説明できる可能性があり、検討を進めている。Δ(1600)もカイラルF状態としてその光振幅が説明できそうである。N(1675)(J=5/2,P=-1),N(1680)(J=5/2,P=+1)の光振幅はこれらを相対論的状態とすると説明できないことがわかった。強い相互作用によるπ中間子崩壊についても、低エネルギー定理とPCACを用いて検討を進めている。研究は途上にあり、論文発表には至らなかったが成果は着実に上がっていると考える。次年度にまとめて発表する予定である。
|