研究概要 |
厳密なカイラル対称性を持つオーバーラップフェルミオンを動的に取り込んで生成された2フレーバーQCDのゲージ配位を用いて、平成19年度は以下の成果を得るに至った。 1.フレバー物理において最も重要な非摂動パラメーターの一つである中性K中間子混合パラメーター(Bk)の計算を行った。まず、得られた結果とカイラル摂動論(ChPT)の予言の間でBkのクォーク質量依存性を詳細に比較し、十分クォーク質量が軽い領域ではnext-to-leading orderのChPTに特徴的な対数的振る舞いを計算結果がよく再現することを実証した。この「ChPTとconsistentであることの確認」により、我々の研究プロジェクトの目的の一つが達成されChPTの予言を用いた物理的u/dクォーク質量への外挿が初めて正当化された。 2.真空偏極関数をvectorとaxial-vector currentの両方について計算し、その差をとることにより、L_<10>(ChPTのLow energy constantの一つ。 S-parameterと関係している。)と電磁相互作用がQCDのフレーバー対称性を破ることにより生じる擬南部-Goldstone boson mass(即ち荷電-中性π中間子質量差)を格子QCDを用いて計算できることを実証した。この方法の確立により、電弱対称性を破るメカニズムの有力な候補の一つであるテクニカラーモデルの直接的検証が可能になった。 その他、ドメインウォールフェルミオン形式を用いて生成された2フレーバーQCDのゲージ配位の上にQED相互作用を導入し、荷電-中性擬スカラー中間子質量差を計算し、実験のインプットを用いて,最も不定なクォーク質量であるupとdownクォーク質量を決定した。我々の結果は、Strong CP問題の最も単純な解mu=0を否定する。
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