「B^0_d→J/ψK^0_s崩壊を用いたCPT非対称パラメータz、およびB^0_d中間子のB_HとB_L崩壊幅の差△Γ_dの決定」と、「B^0_s中間子の崩壊幅の差△Γ_sの決定」に関する研究をそれぞれ行った。研究計画内での利用すべきデータの過小評価と問題となりうる系統誤差の過小評価のため、これらの解決に予想以上の時間を要し計画年度中に研究を完遂することができなかったが、今後、当該研究を続行させるのに必要な情報と技術を多数得た。 zおよび△Γ_dの決定の研究に関して、z≠0および△Γ_d≠0の特性を持ったB^0_d中間子の時間発展の計算を完成させ、これに基いて検出器の応答を含めたシミュレーションの発生方法を確立した。また、zおよび△Γ_dを最尤関数法によって決定するソフトウェアも完成させ、シミュレーションと組み合わせて当該ソフトウェアは入力したzに対して線型な応答を返すことも評価した。この成果に基づき、平成18年初夏までにBelle実験が蓄積した535メガBBの中のB^0_d→J/ψK^0_s崩壊のデータからzを決定すると、Re(z)の統計誤差がおよそ0.03になると見積った。zの統計誤差をより向上させるためにはB^0_d→J/ψK^0_sのみならず、B^0_d→D^<(*)+>h^-等の崩壊も解析に使用することが必要であり、研究を続行中である。 △Γ_sの決定の研究に関しては、まずB^0_s→J/ψφ崩壊の素粒子反応を再構築するソフトウェアを完成させ、事象選別のための条件の最適化を行った。また、ここから再構築できる事象の割合は約35%と見積り、現在のBelle実験のγ(5S)の総データ24fb^<-1>からはおよそ45から60の事象数があると予想した。この事象数に基づいた前述のシミュレーションと最尤関数法によるソフトウェアの組み合わせから、△Γ_s/Γ_sの統計誤差はおよそ±23になると見積もった。本研究は先行するDφ実験の手法とはまったく異なるので、Dφ実験の最新結果に統計量で4倍程度劣る見積もりではあるが、相補的な研究としてなお積極的に推進すべきものであることを明らかにした。
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