研究概要 |
重い電子系化合物CeRhIn5は,TNh=3.8K以下でq=(1/2,1/2,0.297)の変調を持つ不整合反強磁性を示す物質である。最近,この物質に静水圧を印加すると反強磁性は抑制され,それが消失する圧力Pc=1.5GPa近傍で超伝導が誘起されることが発見されたことにより,反強磁性と超伝導の関係について精力的に研究が進められている。一方,この系はRhサイトをCoに置換することによっても反強磁性は抑制され,Co濃度が40%以上になると超伝導相が現れることが明らかになっている。そこで我々は反強磁性と超伝導の両方が発生していると考えられるCeRh0.6Co0.4In5における中性子弾性散乱実験を行うことにより,超伝導相近傍における反強磁性状態の変化について調べた。その結果、それぞれqh=(1/2,1/2,0.306),ql=(1/2,1/2,0.402),qc=(1/2,1/2,1/2)の波数ベクトルで表現される3種の独立なBraggピークが発生していることを発見した。偏極中性子散乱実験によれば,これらのBraggピークはすべてスピンフリップ散乱過程を含んでいることより,磁気散乱に起因するものと考えられる。qhの波数をもつ磁気構造はCeRhIn5で観測される不整合反強磁性と対応するものと考えられるが,qcの波数を持つ整合反強磁性はCo置換によって新たに発生したものである。このような整合反強磁性は,CeRh1-xCoxIn5と類似のx-T相図をもつCeRh1-xIrxIn5でも発見されており,超伝導発現との関連において興味深い。一方,qlに対応する磁気Braggピークの幅は分解能よりも広いことより,この反強磁性は何らかの理由で試料に不均一に発生している可能性がある。
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