研究概要 |
本研究は、高温超伝導体の層状構造と外部磁場との組み合わせで現れる、磁場誘起型の光学活性モードの発現機構を明らかにし、また、その応用として、外部磁場によって周波数がチューナブルな、テラヘルツ発光素子の開発を目指している。 1.本年度は、イットリウム系高温超伝導体(YBCO)に関して、超伝導磁気光学応答が最大となる物質条件を探索した。まず、試料を引き上げ法によって作成の後、酸素・空気アニールによって、キャリア数をコントロールし、c軸光学応答の20〜50cm-1付近に現れる、磁場誘起型光学活性モードの強度とアニール温度および、超伝導転移温度(Tc)の相関を測定した。その結果、Tc=54K,59K,65K,80Kの試料の中で、Tc=59Kの試料の磁場誘起モードの強度が最も強く、キャリア数がその最適キャリア数より多くても少なくても、強度が低下することが明らかになった。この最適キャリア数は、ゼロ磁場下でも現れる別の光学活性モード(400cm-1モード)がもっとも明瞭に現れるキャリア数と一致し、これまで別々の現象と思われていた、磁場誘起型光学活性モードと、ゼロ磁場下の400cm1モードが、実は密接なかかわりを持っている可能性を示唆している。 2.また、本年度は、Cu02面の積層枚数が1枚から最大5枚までコントロールできる、水銀系高温超伝導体のc軸光学応答も測定し、(1)ゼロ磁場下で現れる「400cm-1」モードが、多層系高温超伝導体にユニバーサルな光学応答であることを発見し、(2)さらに磁場依存性から、超伝導転移がそのモードの形成に関与していることを明らかにした。
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