これまでの研究によって、水銀やカドミウム系と同様に、亜鉛のクロムスピネルにおいても強磁場下で磁気転移を起こすことが示された。当該年度には、この亜鉛のクロムスピネルにおける磁気転移の詳しい挙動が明らかになった。半磁化をもつ磁化プラトー相が存在するという点は他の系と同様であるが、磁化プラトー相よりも低磁場および高磁場側に、新たな磁気相の存在を示唆する結果が得られた。この磁気転移の現れ方の違いは、スピン格子相互作用の大きさの違いに起因していることが、理論的および実験的に示唆された。 本課題の研究により、類似の磁気転移を示す三つ目の系が見つかり、磁気的なエネルギーやスピン格子相互作用の大きさの異なる三つの系の磁気挙動を明らかにすることによって、本現象を系統的に理解する大きな足がかりを与えたと言うことができる。
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