光ファイバ方式レーザー変位計を低温磁場中で利用可能にするためのクライオスタットを開発し、超伝導マグネットを用いた定常磁場環境、またパルスマグネットを用いてパルス強磁場環境において、コバルト酸化物Co0の磁歪測定を行った。その結果、結晶ドメインの整列にともなうと考えられるヒステリシスをともなった磁歪の変化を観測した。この結果は、過去に行った磁歪測定の結果とほぼ矛盾しないものであり、この実験手法が強磁場磁歪測定において十分有効であることを示すことができた。これにより、歪みゲージでは測定の困難であった微少試料や有機磁性体の磁歪測定の実施が現実的なものとなったと考えている。この結果は、2008年3月に近畿大学で開催された日本物理学会第63回年会において発表した。 スピンフラストレーション効果と結晶構造の相関を研究するために、磁歪測定と相補的な研究手法である放射光X線回折測定を用いて、三角格子反強磁性体CuFeO_2とスピネル化合物HgCr_2O_4に対する磁場中X線回折実験を行った。両化合物において、磁場の印加にともなって不連続に出現する磁場誘起相に対応した不連続な格子変形を観測することに成功した。この結果は、磁場の印加によってフラストレーション効果が解消され、それにともなって歪んでいた格子が逐次元に戻る、という現象として解釈出来ることがわかった。これらの結果は、論文誌J. Phys. Soc. Jpn. 76(2007)043708.及びPhys.Rev.B75(2007)224411.において、それぞれ発表した。
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