正方晶の結晶構造を持つ2次元直交ダイマー物質SrCu_2(BO_3)_2において、強磁場中で発現する磁化プラトーなどの特異な磁性と構造の関係を明らかにするために、パルス強磁場中でのX線回折測定および磁歪測定を行った。直交ダイマー面に垂直に磁場を印加し、面内の格子定数aの変化を回折実験により調べたところ、磁化の急激な増加と対応して格子定数aが減少することが明らかとなった。そしてその振る舞いは磁化過程の1次の関数と非常に良くスケールすることが解った。単純な交換歪みのモデルでは格子の変化は磁化の2乗に比例すると考えられることから、今回の結果が量子スピン系に特有の現象なのか今後詳細に検討していく必要があると考えている。この実験結果と、直交ダイマー面内の複数の方向で測定した磁歪測定の結果を比較したところ、全ての測定でほぼ同じ変化率を示す事がわかった。このことは、対称性の変化を伴った構造変化が起きていない事を示しており、回折測定の半値幅の磁場依存性のデータもこの結果を支持している。磁歪測定ではさらに、1/8および1/4磁化プラトー領域において磁歪の変化が抑制される振る舞いが観測された。この結果はプラトーの形成と構造の安定性が密接に関わっていることを示すものである。これらの結果は論文誌JPSJ78(2009)043702.に掲載され、また2009年7月にドイツのドレスデンで開催される強磁場国際会議RHMF2009にて発表する予定である。
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