平成18年度は、本研究課題の初年度としてまず実験準備として実験設備の立ち上げ・改良を行った。QCM測定のために、柔軟に発振周波数を変化でき励起パワーを1nW以下に設定できる点において極低温環境下の実験に大変に有利である周波数モジュレーション(FM)法を用いたQCM測定システムを構築した。さらに、実験に必要な極低温に冷やすために、既存の1K冷凍機を改造し、Tube-in-Tube型の熱交換器を持つ3He-4He希釈冷凍機ユニットを自作し取り付けた。冷凍機の試運転の結果、最低温度は45mKに到達し、本実験に十分な冷凍能力を得ることができた。温度測定に必要なACレジスタンスブリッジAVS-47を本研究助成により購入した。QCMサンプルは、極低温で熱伝導を改良した無酸素銅(OFHC)製の自作実験セル内にセットされ、3He-4He希釈冷凍機に取り付けられた。 実験準備の終了後、50mK〜1Kにおいて2次元金基盤上のヘリウム4超流動薄膜に対してQCM測定を開始し、超流動転移に伴う超流動密度とエネルギー散逸の温度変化を測定した。QCMのオーバートーン発振を利用して20〜180MHzの広い範囲で測定周波数を変化させ、超流動転移温度の周波数依存を測定した。測定データと動的コスタリッツ・ザウレス(KT)理論との定量的な比較・解析から、20〜180MHzという極めて高い周波数においても動的KT理論で説明されることがわかった。また、散逸ピーク温度の周波数依存から、動的KT理論を特徴付ける渦パラメータD/r0^2(D:渦の拡散係数、r0:渦芯半径)や静的なKT温度T_KTなどの値を正確に見積もった。
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