●(C_2H_5)(CH_3)_3Sb[Pd(dmit)_2]_2の内側^<13>C原子におけるNMR測定 本研究課題の昨年度までの成果として、dmit分子上の外側^13CサイトNMR測定により、上記物質は20mKまで磁気秩序は生じないことを明らかとし、基底状態はスピン液体状態であると考えられることを示してきた。また、スピン-格子緩和率の温度依存性に1Kで異常が見られることを見出してきた。ただし、外側^<13>Cサイトは超微細結合が小さく、この異常がスピン系の性質を反映しているかどうかを確定できていなかった。今年度はこの点を確定するため、dmit分子上の内側Cサイトを^<13>Cに置換した試料を準備し、超微細結合の大きな内側^<13>CサイトにおけるMR測定を希釈冷凍機下で20mKまで行った。この結果、内側^<13>Cサイトでも1Kで緩和率の温度依存性に急激な変化があることを見出し、この異常が間違いなくスピン系の性質を反映していることを明らかとした。この温度でスピン系に2次相転移、即ち何らかの対称性の破れが生じていると考えられる。内側^<13>Cスペクトルでも、線幅の増大は全く見られず、この相転移が古典的磁気秩序で無いことが確認された。また、緩和率の低温極限での温度依存性は温度の2乗に比例しており、相転移以下の低温相では、ノードギャップが開いている可能性があると思われる。 ●(C_2H_5)(CH_3)_3P[Pd(dmit)_2]_2の圧力-温度相図の最終決定 昨年までの^<13>C-NMRの実験結果を詳細に解析し、上記物質の圧力-温度相図を完全に確定させ、圧力下超伝導相がスピンギャップ相に隣接していることを示した。この結果は、強相関電子系超伝導は反強磁性秩序相に隣接して出現するという従来の常識を覆すものであり、超伝導発現機構に一石を投じるものである。(この結果はPhys.Rev.BのEditors' Suggestionに選出された。)
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