研究概要 |
極低温において量子性が強く効いたスピン系の磁気状態をミクロな視点から明らかにするために、希釈冷凍機内で試料の結晶軸と印加磁場方向の角度制御が可能なNMRプローブを完成させ、これにより、量子スピン系物質Cs_2CuCl_4の極低温(60mK)における磁気構造を詳細に調べた。この物質の極低温の磁気状態に関しては、磁場中でスピン液体状態をとると提案されていたが、我々は詳細なNMR測定により、全磁場領域で磁気秩序状態を取ることを明らかにし,磁場依存性から5段の磁場誘起量子相転移を観測し、精密な磁気相図を完成させた。また、Znドープされた2次元直交ダイマー系SrCu_2(BO_3)_2および、2次元スピンギャップ系(CuCl)LaNb_2O_7、及び強-反強磁性ダイマー系(CH_3)_2NH_2CuCl_3、パイロクロア系Kos_2O_6においてESR・NMR測定を行い、これらの磁気状態を詳細に調べた。SrCu_2(BO_3)_2及び(CuCl)LaNb_2O_7においては、不純物状態を観測し、それがこの系の磁気状態の情報を得るのに有用であることを明らかにした。今後、更に高磁場の測定を行うことにより、これらの系の量子相転移の機構が解明できるものと期待される。(CH_3)_2NH_2CuCl_3においては、ESRにより磁気励起を直接観測し、スピンギャップの直接的情報を得た。Kos_2O_6においてはNMRから、Kイオンの異常な振動(ラットリングフォノン)を観測し、このフォノンが超伝導と密接に関係することを明らかにした。
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