研究概要 |
結晶構造に反転対称性を持たないCePt_3Siの試料依存性の原因が試料の組成比や熱処理と関係があることを,組成比を変えた多結晶試料の研究から明らかにした。組成比や熱処理を変えた試料を系統的に準備し,希釈冷凍機温度域からの比熱測定を行った。試料には,(1)超伝導転移温度が0.45Kで2.2Kに大きく顕著な反強磁性転移を示す試料,(2)超伝導転移温度が0.75Kで2.2Kの反強磁性転移が非常に小さい試料,(3)超伝導体積分率が小さく,3.0Kに強磁性的な異常を示す試料などがある。Ceの多い組成でよく熱処理をしたものは(1)の試料が出来やすく,Siが多く熱処理をしていない試料では(2)の試料が,Ptが多く熱処理をしない試料では(3)の試料が出来やすい。(1)の試料は残留抵抗が小さく,この試料の結果が最もCePt_3Siの本質に近いと考えられる。この試料において,比熱に現れる0.45Kの超伝導転移および2.2Kの反強磁性転移に伴う異常は最も大きく,0.45Kに超伝導転移を持つ超伝導状態と2.2Kの反強磁性は共存していると考えられると提案した。また,超伝導状態の残留比熱係数がほとんどゼロになり,かつ,比熱の結果が超伝導ギャップにラインノートがある場合でよくあう結果もこの試料で得られた。試料依存性が熱処理や組成比に強い相関があることから,この系の特徴である反転対称性の欠如の原因であるSiサイトとPtサイトの秩序が関係していると提案した。このように考えた場合,(試料(1),(2)の磁気秩序状態の違いも無視できないが,)試料(1)と試料(2)の超伝導転移温度の違いが結晶構造の反転対称性の有無と強く相関することを示唆する。結晶構造の反転対称性の有無を直接実験で示すことは難しいが,超伝導転移温度と相関があることを示した意義は大きい。
|