(1)最近、京都大学の量子光学実験グループで用いられた冷却Yb原子はボソンとフェルミオンを含めて安定な同位体が7つ存在する。これらの冷却混合気体の量子凝縮相を使うと、その組み合わせで様々な相互作用の強さで特徴づけられる多成分超流動を研究する事が可能となる。この京大で実現したYb原子気体のボース凝縮体をターゲットとして、多成分凝縮体における崩壊のダイナミクス、ソリトン形成、量子渦の物理を議論した。崩壊の不安定性が異成分間の相互作用の強さによって大きく修正され、異成分が結合した非線形ダイナミクスを示す事を明らかにした。 (2)光格子中の極低温のボース気体の振る舞いは、各サイトあたりの平均粒子数が小さい時にはボース・ハバード模型で記述される。一方、平均粒子数が大きいときには各サイトをボース凝縮体が占め、サイト間はジョセフソン結合によってネットワークを組んだジョセフソン接合列(JJA)となり、ハミルトニアンはXY模型となる。最近JILAのグループが2次元光格子を回転させて、ボース凝縮体中に存在する渦と格子ポテンシャルとのピンニング効果を観測した。光格子ポテンシャルの振幅が大きいとき、この状況はJJAに一様な磁場を加えたことに対応し、サイト間結合にフラストレーションを生む。フラストレーションを持つXY模型は多彩な基底状態の構造や相転移を起こす事が知られているが、JILAの実験は冷却原子系を用いてそれらの物理を検証することが可能であることを示唆する。今年度の研究ではXY模型に還元する定式化とモンテカルロシミュレーションを用いて基底状態の性質を議論した。
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