f電子系化合物の示す複雑で豊かな物性の背後には、f電子が持つ多極子の自由度が隠されている。この多極子の自由度が最も顕著に現れるのが多極子秩序とよばれ現象である。本研究の目的は、NpO_2において世界で初めてとなる核磁気共鳴(NMR)による研究を行い、f電子の高次の磁気多極子のひとつである磁気八極子に起因する全く新しい秩序状態を微視的観点から明らかにすることである。 研究初年度である平成18年度は、常圧下でのNpO_2単結晶を用いたNMR研究を行い、NMRスペクトルの磁場角度依存性の測定から、磁場中での酸素核における超微細相互作用の起源が、磁場誘起された磁気双極子および八極子モーメントにあることを示すことができた。この結果は八極子秩序状態がNpO_2で実現していることを微視的観点から強く支持する結果となった。本年度はさらに核スピン-格子緩和時間の測定も実施し、Np核とO核の強い結合に起因する特異な核磁気緩和の機構の存在を明らかにすることに成功した。 本研究成果は国際的な学術誌に掲載されるとともに、国際会議における招待講演として報告され、国際的にも高い評価を受けた。
|