研究概要 |
今年度は、カルコゲナイド化合物の中でも、UTe_2, UTeS及びβ-US_2の単結晶育成及びそれらの物性を詳細に研究した。 UTe_2は、斜方晶Immmの結晶構造を持つ。この結晶構造は、Te原子による三角柱の中心にウラン原子が位置しており、このセルが[100]方向に一列に並ぶ特長がある。単結晶による磁化測定の結果、結晶構造を反映した非常に大きな磁気異方性があることが分かった。磁化容易軸は、三角柱のセルが一列に並ぶ方向、つまり[100]方向であることが分かった。また困難軸[010]方向の磁化率の温度依存性では、40K付近で山を持つような振る舞いを示すことが分かった。この特徴は、重い電子系等によく見られる振る舞いである。実際に比熱測定を行った結果、大きな電子比熱係数γが観測されため、UTe_2の基底状態は、重い電子系の可能性がある。今後は、より純良な単結晶を育成し、ドハースファン・アルフェン効果測定を行うことで、直接重い準粒子を観測することを目指す予定である。 β-US_2及びUTeSは、斜方晶Pnmaの結晶構造を持つ。両者は同じ結晶構造を持ちながら、磁性と伝導は大きく異なる。常磁性β-US_2は、ギャップの小さな半導体である。一方、87K以下で強磁性に相転移するUTeSは、半金属である。単結晶による磁化測定の結果、両者の磁気異方性は大変似ており、磁化容易軸は[001]である事が分かった。ただしβ-US_2は常磁性であるため、低温における容易軸方向の磁化は、UTeSと比較すると小さい。結晶構造と磁気異方性がUTeSと同じでありながら、β-US_2が強磁性に転移しない原因を研究するため、圧力下電気抵抗測定を行った。その結果、圧力を増加させると、電気伝導は、UTeSのような金属的な振る舞いに近づいていくことが分かった。またその変化に伴い、電気伝導に異常が現れることが分かった。この異常は、圧力の増加に伴い、高温側へシフトしていく。UTeSとの類推からすると、この異常は、強磁性転移である可能性が高い。現在は、圧力下磁化測定を行うことで、この異常が本当に強磁性であるかどうかを調べている。
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