研究概要 |
Ce115化合物(CeMIn_5 : M=Co, Rh, and Ir)に対応する正方格子上のモデルを構築し、このモデルの超伝導、磁性を揺らぎ交換近似によって調べた。CeCoIn_5は超伝導転移温度T_c=2.3Kであり、CeIrIn_5はT_c=0.4Kである。CeRhIn_5はネール温度T_N=3.8Kで反強磁性転移を示す。これらの物質では、Ceイオンあたりのf電子の数は同じ1つであり、フェルミ面の形状も似ている。我々は、フェルミ面の形状やf電子の数以外で、超伝導をコントロールしうる要素として、結晶場軌道状態に注目した。モデルには、f電子の状態として金角運動最j=5/2の状態全てを取り入れた。これらの状態は正方晶の結晶場の下で1つのΓ_6二重項と2つのΓ_7二重項の状態に分かれる。適当な結晶場パラメータを選ぶことにより、結晶場分裂を園定したまま、Γ_7の波動関数を変化させることができる。結晶場分裂の大きさを固定する限りフェルミ面の形状はほとんど変化しないが、結晶場軌道状態を変化させることによって磁気揺らぎが大きく変わり、基底状態は常磁性、反強磁性、d波超伝導状態に変化する。よって、このような軌道自由度のある系においてはフェルミ面の形状やf電子の数だけではなく、結晶場の軌道状態も超伝導をコントロールするパラメータになりうるということがわかった。我々はさらに、中性子散乱と熱膨張の実験結果から、Ce115の結晶場軌道状態を解析した。そこで得られた結晶場軌道状態を用いると、これらの物質におけるT_cとT_Nの変化の仕方は我々の理論計算の結果とよく合うということがわかった。
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