本研究課題においては、平衡論の枠組みでは記述できない、非平衡系における界面現象のダイナミクスを実験、理論的考察、数値計算を組み合わせることによって解明することを目的とする。その中で本年度は、BZ反応や水-樟脳系における界面張力の振動、その制御に着目して研究を進めた。その結果、次に挙げるような成果が得られた。 (1)BZ反応系において、油と反応溶液の界面をうまくデザインすることにより、Marangoni効果を利用してcmオーダーで物体を輸送することができた。また、化学波を発生させるタイミングを制御することにより、物体の輸送のタイミング、方向の制御などにも成功した。このような流れについて簡単な解析を行い、どの程度の流速が得られるのかを見積もった。 (2)ペットボトルに水をいれ、口を細くしてさかさまにした系で、水の流れが振動的に起こる現象について解析した。この現象は自律振動としてみることができ、リミットサイクルを持つような簡単なモデル方程式を記述し、メカニズムの解明を試みた。 (3)界面活性を持つ樟脳粒を水面に固定した系で振動現象が見られる。この振動現象に関して、水相の表面張力を変化させて振動数依存性を調べた。また、樟脳粒にかかる力と水面の変形の同時観測にも成功し、線形振動ではなく非線形振動であることを見出した。これらをもとに簡単な安定性解析の議論塗おこない、Marangoni対流が重要な役割を果たしていることを見出した。
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