研究概要 |
本課題は、現在固体物理のホットな話題となっている重い電子系の量子相転移に関する研究である。重い電子の量子臨界点(QCP)には、SDW QCPとlocally-critical QCPの2種類が存在することが指摘されており、典型的な重い電子系であるCe(Rui-xRhx)_2Si_2の量子相転移のユニバーサリティクラスを調べることが主たる目的である。この物質は、Rh濃度4%以上(x>0.04)でq3相と呼ばれる反強磁性相に転移し、Ge置換を行うことで別の反強磁性相(q1相,double-q相)が現れること、がこれまでの研究で分かっている。本年度は、(i) q3相にあるx=0.1の試料に対する圧力下磁化測定による圧力誘起量子相転移の観測、(ii) q3相とdouble-q相及びフェルミ液体相の3相がぶつかる境界近傍の(x, y)=(0.01, 0.05)の試料に対する中性子非弾性散乱実験によるスピンゆらぎの観測、を行った。(i) の結果、q3相は、Pc=0.3GPaでフェルミ液体相に量子相転移し、転移温度TNの急激な変化から、その次数は1次である可能性が高いことを見いだした。また、(ii) の実験の結果、 (x,y)=(0.01,0.05)の試料では、q1及びq3のスピンゆらぎが両方観測された。両ゆらぎは温度の低下と共に発達していくが、q3のゆらぎの方がより強く増強されること、最低温(T=1.5K)ではq3は動的なゆらぎと共に静的な短距離秩序が共存すること、このq3の静的短距離秩序の発達とともに、q1のゆらぎの発達が止まること、が分かった。これらは、QCP近傍のフェルミ液体領域において、不均一な構造が現れることを示しており、この量子相転移が、QCPから少し離れた領域で観測した場合はSDWQCPのように見えるが、実際には一次転移であることが示唆される。これは先に述べた、「圧力下実験の結果とコンシステントである。
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