研究概要 |
本年度は、初年度であるため、方法諭の基礎的整備に取り組んだ。つまり、比較的伝統的な問題に、我々の方法を応用し、その応用の広さを実証し、特色を明示するといった作業に従事した。 さて、我々の方法は、高次元における対角化法(Novotny法)である。高次元では、専ら、モンテカルロ法が常用されてきた。我々は、高次元でも、対角化法が応用可能であること、及び、それがモンテカルロ法とは、趣の異なった観点を与えることを示す。本年度の作業が以後の年度の布石となる。 1,三次元パーコレーションへの応用 我々は、方法諭を拡張して、三次元パーコレーションの理論形式を構成した。また、実際に、大規模計算を行い、その有効性を実証した。すなわち、パーコレーションの臨界指数を求めた。これは、モンテカルロ法による臨界指数と矛盾しない。実は、1980年頃に、二次元のパーコレーションの対角化計算は、フランスの研究者により、推進された。ところが、20年間、三次元への拡張がなされていなかった。本研究補助によりこのプレークスルーに成功した。今後、対角化の計算の特色を生かして、モンテカルロ法とは趣の異なった視点を確立する方向への発展が期待される。 2,三次元イジング模型への応用 三次元イジング模型も、対角化による計算が困難である。少なくとも臨界指数を精密に計算する用途には不向きであるとされていた。我々は、精密な計算結果を目指すべく。有限サイズの誤差を減らす工夫を盛りこんだ。その為に、我々は、やはり、方法論を拡張して、一般化された相互作用を取り込んだ。この拡張を併用することで、有限サイズの誤差の減少(繰り込み固定点への接近)に成功した。我々が得た臨界指数は、モンテカルロ法には及ばない。しかし、対角化法としては以前の常識を払拭する成果である。計算精度でも、モンテカルロ法に肉薄するといった期待がある外、モンテカルロ法とは、系統の異なったアプローチによる発展が期待される。
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