高分子ブロック共重合体はbcc球相、ラメラ相、ヘキサゴナルシリンダー相、ジャイロイド相等のさまざまな平衡構造を形成することで知られている。これまで、我々はこれらの構造間の転移を温度変化によって引き起こし、その過程でどのようなことが起こるか調べてきた。 本年度はモード展開が適用でき、ミクロ相分離の構造欠陥の欠陥の研究が行いやすいと考えられる転移点近傍の構造について研究を行った。 昨年度から引き続き、無秩序相からbcc構造への転移の途中で、無秩序に球がならんだ構造が形成されることを数値シミュレーションで確認し、bcc構造が核形成する速度などを見積もった。その結果は高分子討論会で発表した。 さらに本年度は、fcc構造に着目して研究を進めた。以前の線形安定性解析でfcc構造は線形不安定であると結論付けていた。しかしながら、さらに詳しく線形安定性解析することで、fcc構造が安定になることを今回明らかにすることができた。他にも、数値シミュレーションにより、fcc構造が最安定になる領域を相図上に示し、シミュレーションボックスのサイズを時々刻々変化させることでfccとbcc構造間の転移のキネティクスを調べるなどfcc構造に関係した様々な研究を行った。シミュレーション結果から、転移の途中では穴あきラメラ構造をとることがわかっている。fcc構造に関するこれらの結果については、現在論文にまとめているところである。他にも、流体効果を取り入れた新しい時間発展方程式についての理論と数値計算についても研究を進め、そのダイナミクスをまとめた論文を現在投稿中である。 来年度は本年度の結果を踏まえ、fcc構造とbcc構造の構造欠陥について研究を進めていきたい。
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