ブーリアンネットワークは、遺伝子ネットワーのモデルとして使用されてきた離散力学モデルである。本研究では、モデル生物である大腸菌に注目し、その転写制御因子のネットワークのモデル化を行った。まずデータベースや文献からネットワークのトポロジーに関するデータマイニングを行った。すると大腸菌では、結合度分布にスケールフリー性を持っトポロジーがあることが分かった。結合度の大きいノード(ハブ)のルール(ブール関数)に依存して、ノード間の相互情報量が変化することが分かった。これをもとに、ハブ近傍のサブネットワークを構築した。局所的なブール関数の配置に基づきダイナミクス分類すると、関数の配置に依存してエントロピーの生成確率や生成量が異なった。これらの研究は、さらに未知の有用なトポロジーの発見・創発に利用でき、人工遺伝子ネットワークやさらに人工生命の設計に対する知見が得られる。 World wide web(WWW)、航空路ネットワークなど人工、さらに細胞内の代謝・遺伝子発現制御ネットワーク、食物連鎖など天然に存在する複雑で巨大ネットワークが詳しく調べられるようになった。生物由来のネットーワークに注目すると、それらのネットワークは、進化および適応の結果として現在生息しているため、種々の巨視的な統計量を再現するモデルを構築することによって、ネットワーク成長・複雑化のルールおよび進化や適応が理解できる。本研究では、小さな完全グラフ(クリーク)が融合しながら成長する数理モデルを提案した。モデルの数値計算は、種々のべき乗関係(スケールフリー性等、次数相関等)を再現した。さらに統計力学的(平均場近似)な方法を用いた解析解は、数値解とよく一致した。巨大で複雑な生化学反応等のネットワーク設計原理の解明に寄与する。さらに未知の有用なトポロジーの発見・創発に利用でき、人工遺伝子ネットワークやさらに人工生命の設計に対する知見が得られる。
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