研究概要 |
ブーリアンネットワーク(BN)は、複雑なネットワークのモデルとして使用されてきた離散力学モデルである。 本研究では、種々のモデル生物内における分子ネットワークの巨視的な構造に注目し、その構造の機能・性質を理解する目的でモデル化を行った。 少なくとも2つの統計的な性質が知られており、1)結合度分布は極めて不均一で、スケールフリー性を持つ(大域構造)。2)モチーフと呼ばれる少数ノードからなる構造があることが分かった(局所構造)。 これらの大域および、局所構造をBNに拘束条件として組み込み、それら構造の有無や量の過多に依存して、BNの力学的性質がどのように変化するのか調べ、それら構造の生物学的な役割や機能を推定した。 すると大域構造は、モデルネットワークの状態変数を同期化を促進させる機能があることがわかった。これにより、発現パターンに相当する状態変数の乱雑さを押さえることができる。 局所構造は、局所構造の内部結合様式に依存して、状態変数を落ち着かせる構造と、乱雑さを増大させる構造があることが分かった。 生体内には、落ち着かせる構造が統計的に有意に存在していることが知られており、本研究において力学的な性質から、その構造の役割・機能が推定できた。 さらに上記の局所構造をBNに組み込まず、単体で網羅的に解析・評価方法を提案し、実施した。すると、上記のBNで得られた研究結果と定性的に一貫性のある結果が得られた。 これらの研究は、さらに未知の有用なトポロジーの発見・創発に利用でき、人工遺伝子ネットワークやさらに、iPS,ES細胞制御に関する知見が得られる可能性がある。
|