研究概要 |
生体分子モータをイメージした柔らかいラチェットモデルを取扱った.この系を異なる温度の熱浴を同時に接触させることによって調べたい非平衡状態を維持することが出来る.この際に生じる一方向運動を典型的な非平衡現象を精査するプロトタイプという位置付けで研究した.計算機シュミレーションによって得られるここの軌道と,その軌道に沿った熱流の計算を行い,平均法としてconditioned ensemble法を用いることで,熱浴の温度差によってもたらされる一方向運動の方向と強さを,1ステップ当たりの熱移動量に関係付けることが出来,線形応答領域では,輸送係数の表式が1ステップ当たりの熱移動量と明確な対応をもって表現されることを示し,数値計算の結果によって,その結果を確認した.また,結果の一般性は,モデルの表式を,特定の特殊なモデルに限らない,より一般的な表式に改めても同一の議論が適用可能であることから確認された.出版論文には,この一般的なモデルの表式を反映した.また,フランスLes HouchesにおけるワークショップとSan Diegoにおける会議に参加し議論を行った.前者のワークショップは,国際的な生体分子モーター関係の実験研究者と理論研究者が集まる貴重な場であり,多くの有益な議論,助言を受けることを行うことが出来た. また,非平衡ガラス系として化学反応ネットワーク系での取り組みに着手した.
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