当研究の目的はカルシウム原子を用いた時間領域の原子干渉計を開発し、これを用いて物理量を測定することである。この目的を達成するためには、干渉計を構成する高安定な657nmレーザー1光を必要とし、その強度と位相を高速で制御する必要がある。また、原子を真空中で捕捉するために強い423nmレーザー光を必要とする。 まず、Fabry-Perot型光共振器で657nmのレーザー光の縦モード監視し、レーザーを安定に保つことができるようになった。また、音響光学素子(AOM)とRF電磁波増幅器、RF電磁波発振器を組み合わせ、657nmレーザー光の強度と位相を高速で制御することができるようになった。 これと並行して423nmのレーザー光源を開発した。これまで用いてきたKN結晶では氷点下まで冷却1しなければならず、取り扱いが難しかった。また、思ったような強度の出力を安定に得ることができなかった。そこで、近年開発されたpp-KTP結晶を購入し、これと共に高強度を得るための光共振器の設計を見直した。こうして、購入した温度コントローラでpp-KTPの温度を室温程度で安定に制御することにより、KN結晶と同程度の強度で安定な423nmレーザー光を得ることに成功した。また、この装置でも、磁気光学トラップ技術を用いてカルシウム原子を真空中に捕捉することができた。 また、これらの準備だけではなく、3光波4準位が相互作用する複雑な原子干渉計について論理的な解析と検証実験も行った。この成果は論文として発表した。さらに、現在、磁場中を運動する電気双極子に発生する量子位相(レントゲン位相)の測定を開始した。
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