研究概要 |
光格子中にトラップされた冷却原子気体を用いて固体物理における多体効果を研究しようとする試みが近年大きな注目を集めている。中でも電子系との関連で重要となる40Kや6Liといったフェルミ原子気体はFeshbach共鳴により原子間の相互作用を著しく変化させることができ、多体効果を調べる上で優れた特徴を持つ。ごく最近、Feshbach共鳴で相互作用をゼロにした3次元光格子中の40K原子気体を用いてバンド絶縁体状態がK¨ohl等によって観測され[1]、金属一絶縁体転移の実現に向けた大きな進展があった。このような背景のもと、我々は実験結果の定量的解析を目指し、調和振動子型の閉じ込めポテンシャルを考慮した3次元ハバード・モデルの基底状態をGutzwiller近似に基づいて調べた。数値計算に際しては、K¨ohl等のバンド絶縁体の実験に即したパラメータを用いた。全原子数N=105、閉じ込めポテンシャルのトラップ周波数ωx=2π×93[Hz]、ωy=ωz=2π×155[Hz]、格子間隔d=λ/2=413[nm](λは格子レーザーの波長)、光格子ポテンシャル深さ〓=12Er(Er=h2/2mλ2はrecoil energy)、サイト数120×70×70とした。 相互作用がない場合には、サイトでの原子占有数が2の平坦な密度分布が得られ、基底状態はバンド絶縁体相になっていることが分かった。これは明らかにK"ohl等のグループによるの実験結果(Kohl et al., PRL94, 080403(2005))と一致している。一方、Feshbach共鳴の無いbareな散乱長a=174a0を用いて計算した場合の密度分布では相互作用により原子密度は小さくなり、中央の金属領域とその周りの占有数1のモット絶縁体領域が共存していることが分かった。
|