研究概要 |
半導体微小共振器に量子ドットを埋め込んだ系は,量子情報演算素子としての観点から注目を集め,共振器の性能を表すQ値を大きぐすることによって,強結合状態を実現し,そこにビット情報を持たせようとする試みが盛んである.しかしながらQ値を大きくすることと強結合状態を得ることは必ずしも同値ではなく,実際の系では不可避である散逸の効果を考慮すると,Q値の大きい弱結合状態が可能になることを前年度明らかにした.それに引き続き,本年度はQ値が大きい弱結合領域と,以前から知られている強結合領域の境界にクロスオーバー領域が存在することを明らかにした.それに伴って,弱結合からクロスオーバー領域を経て強結合領域に入っていく際に,スペクトルに現れるディップの起源が,量子干渉,量子干渉とラビ分裂の相乗効果,ラビ分裂と変遷していくことが明らかになった.また,量子ドットと共振器モードの間にエネルギーのズレがある場合についても議論した.その結果,量子干渉効果がエネルギーのズレに対して頑強であることを示し,共鳴状態を実現することに労力を要する実際の実験に於いても,その必要がなく,実験的に検証可能であることを示した.
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