本研究は、次世代の電子顕微鏡や放射光源に不可欠な技術要素である電子源の高輝度化を目指し、従来技術のバルク状ガリウム砒素半導体(バルクGaAs)光陰極を遥かに超える高い量子効率で、室温エネルギーレベルの熱運動性能を持つ電子ビーム源の実現が目的である。この電子源実現には、超格子光陰極が有望であると独自に提案している。 本年度の研究では、以下の知見と成果を得た。 ・エネルギーバンド構造計算 エネルギーバンド構造の理論計算から超格子物質として、アルミニウム混晶のガリウム砒素半導体が量子効率と寿命性能に利点を持つことを見出した。 ・新型光陰極開発 量子効率と寿命性能に対する利点を実証するために、バルク状アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)光陰極を名古屋大学ベンチャービジネスラボラトリーの協力により開発した。 ・量子効率と寿命測定 本助成金により改良を加えた光陰極結晶マニュピレータを用いて、このAlGaAs光陰極の性能評価をしたところ、従来技術のバルクGaAs光陰極の2倍の量子効率と10倍以上の寿命の性能向上を達成し、超格子構造にAlGaAs半導体が最適であることを実証できた。
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