コロイドとは一般的に1nmから1mm程度の固体微粒子が液体に分散している状態をいう。相互作用をしない粒子が液体に分散しただけの単純な系でも、系全体は複雑で豊富なレオロジーを示すことが知られており、その起源となる粒子間の流体力学的相互作用はコロイドのダイナミクスを考える上で極めて重要な要素である。また、コロイドの凝集状態がどのような構造を取るか、その境界となるコロイドの体積分率、イオン強度はどれくらいか、という問題もコロイド科学において極めて重要である。 我々は、これまでに二次元系において凝集構造が流体力学的相互作用の有無によってどのように変わるか研究を行なってきた。その結果、コロイドが凝集する際、流体力学的相互作用という動的要因により、ネットワーク構造を形成することが分かった。そこで本研究では、これまで二次元系中心に行っていた研究を三次元系で行い、コロイドの凝集過程に於ける流体力学的相互作用の役割について明らかにし、コロイドの凝集構造に関するより詳細な相図の作成を行うことを目的としている。 最も簡単な動的非対称の混合系であるコロイド分散系を用いて、粘弾性相分離初期における過渡的ゲルの形成メカニズムを調べた。通常、コロイダルゲルにおいては、熱的な揺らぎによってのみ結合したボンドが切れ、ネットワーク構造は成長すると考えられてきた。言い換えれば、結合エネルギーが十分強ければ、ネットワーク構造は成長しない。それに対し、我々は、相互作用が長距離に及ぶ場合のコロイダルゲルの成長・エイジングにおいて、これまでの熱揺らぎに拠る概念とは異なる力学的破壊に基づく新しい成長則を見出した。
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