単一のアクチンフィラメントについて顕微操作と高感度蛍光観察を同時に行い、与えられた張力と蛍光強度の関係を解析した。2点で独立に操作可能な光ピンセット装置を自作し、単一のアクチンフィラメントに5-20pNの張力を周期的に与え、その時の蛍光強度を解析した。結果、actin分子の特定残基(Cys-374)をTetramethyl rhodamineで標識すると、張力が加わると蛍光強度が可逆的に変化する現象が見出された、この結果を受け他の蛍光色素によるラベルも行ったが、光ピンセットに使用する近赤外(1064nm)レーザー光が存在すると、退色速度が極度に速くなり、蛍光観察を行うことは不可能であることが結論され、他の有望な有機蛍光色素を見出すにはいたらなかった。また、遺伝子改変技術を用いた、アクチンフィラメント結合タンパク質の発現・精製を行った。張力存在下での結合解離の一分子解析を目指して、フィラメントの脱重合因子であるコフィリンについて、有機蛍光色素での標識のためのCystein残基の導入、活性型、非活性型の作製を行った。作製したコフィリンを用いて張力存在下での結合解離の観察を行ったが、光ピンセットを用いた実験系では反応の開始を制御することに困難が存在し、新たな実験系を構築することが必要であることがわかった。張力存在下ではないがガラス面に固定したコフィリンについて、1分子での結合解離を測定を行い塩強度依存的に結合速度が変化している様子が観察された。
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