研究課題
地震波速度トモグラフィ法により、西南日本の三次元地震波速度構造を明らかにし、その結果に基づきフィリピン海プレートの上部境界面の形状を推定した。西南日本全域にわたる非地震性スラブも含めた形状の推定は本研究が最初である。その結果、以下のことが明らかになった。1.地震性のフィリピン海スラブの深部延長に非地震性スラブが存在し、沈み込んでいる深さが領域毎に異なる。2.少なくとも中部日本では深さ150-200KM、近畿地方では約60-80KM、中国地方では約60KM、九州では150-200KMまでフィリピン海スラブが沈み込んでいる。3.中部日本に火山が多く分布するのは,フィリピン海スラブの沈み込みによりマントル上昇流が形成されているためであり、一方近畿地方に火山が分布しないのは、フィリピン海プレートが低角で沈み込んでいるために、上昇流が形成されないことによると推測される。これらの結果は、フィリピン海プレートの形状が西南日本のテクトニクスに大きな影響を与えていることを示している。また、2004年新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震震源域周辺の詳細な地震波速度構造を推定した結果、以下のことが明らかになった。1.マントルウエッジの深さ150KM付近から震源域直下のモホ面に至るほぼ鉛直なマントル上昇流が存在する。2.震源域直下の最上部マントルと下部地殻には低速度領域が存在する。3.それらの低速度領域はマントル上昇流によって運ばれたメルトやそれに含まれていた水によって生じていると推測される。震源域に深部から水が供給されているという結果は宮城県北部などでも観測されており、内陸地震の発生には水が関与している可能性が極めて高い。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
地学雑誌 117
ページ: 76-92
Earth Planetary Science Letters 265
ページ: 322-323
Journal of Geophysical Research 112
ページ: doi:10.1029/2006JB004770