研究計画の予定通り、初めにABICに基づく地震地殻変動データの非線形インバージョン解析を行う上で最も重要な定式化を行った。まずは最も簡単な場合である、明瞭な地表断層が現れた場合について考え、その定式化を特段の困難には出会わず完了した。次に、英国オックスフォード大からリーズ大へ移ったWright氏の協力を得て、本手法で解析する地震をトルコで1995年10月に起こったDinar地震(マグニチュード6.1)にすることとした。直線的な地表地震断層が観察された一方、地殻変動データからやや複雑な地震の滑り分布が期待されたため、本手法の優秀性が現れやすいというのがその理由である。この地震による地殻変動は、既にWright氏が作成していたInSAR(干渉合成開口レーダー)画像データから得られた。新たに定式化したインバージョン解析法をその地殻変動データに適用したところ、最適な断層面の傾斜角が34°と以前の解析(約50°)と比べずっと浅い角度に求まった。地震の最大滑り量は約1.3mである。それらに加え、矩形断層上の一様滑りの仮定の下で以前の解析で得られていた傾斜角(約50°)では尤もらしい地震の滑り分布が得られないこと、InSARデータの解析ではデータ間の共分散を考慮することが非常に重要なことも併せて明らかとなった。本研究の成果は、平成18年10月の地震学会秋季大会、同年12月のAGU(アメリカ地球物理学連合)秋季大会の二つの学会、および平成19年1月に京都大学防災研究所で開かれた研究集会「宇宙測地・リモートセンシング技術による地殻変動研究の発展」で発表した。研究集会での発表に使ったパワーポイントファイルは成果発表CDとしてまとめられ、関連する研究者に配付されている。本研究の成果は論文としてまとめ、Geophysical Journal International誌に近く投稿する予定である。
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