研究概要 |
跡津川断層帯において,コーダ波の減衰特性に関する2つの研究を実施した. 1つ目は,様々なパスを通る地震波を用いたコーダ波減衰の解析である.解析にはコーダ正規化法を採用した.解析の結果,観測点-震源の組み合わせによって,減衰(Q値)が異なることが明らかになった.特に断層帯内のみを通るパスにおける減衰が最も大きく(Q値が最も小さく),Q値は140であった.これに対し,周辺領域におけるQ値は250〜520程度と断層帯内よりも大きく(減衰が小さく)なった.これは,跡津川断層帯内全体が,周囲に比べて高減衰領域となっていることを示し,断層帯の構造が周辺領域と明らかに異なることを示している. 2つ目は,S波コーダ波を用いた減衰異方性の研究である.解析には,断層帯内・外で発生した地震の波形を断層帯内に設置した観測点で収録したものを使用した.解析の結果,断層上で発生した地震については,断層の走向方向に振動する波の減衰が小さく(Qが大きく;220〜310),走向と直行方向に震動する波の減衰が大きい(Qが小さい;140〜150)ことが分かった.これは,断層の走向に平行なフラクチャ群の配列などといった断層帯の構造が,地震波の減衰に影響を及ぼしていることを示している.したがって,減衰異方性の解析から,断層帯の詳細な構造が推定できることが明らかになった. 以上2つの研究結果から,跡津川断層帯内では,断層に平行なフラクチャ群などの構造が原因となって高減衰領域をつくり出していることが明らかになった.
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