明治以降の測地測量データを解析して、千島海溝沿いプレート境界域でのすべり収支を推定するために、H18年度においては、測地測量データの整理、GPSデータによる地震間地殻変動の補正手法の開発、地殻変動データによるプレート問すべり推定手法の改良および1952年十勝沖地震への適用を行なった。 具体的には、既存の国土地理院データベースから解析地域、期間における地殻変動データの収集を行なうとともに、文献調査から当該地域でのデータベース化されていない地殻変動データの収集を行なった。これにより、三角・三辺測量、水準測量、験潮データに加えて1970年代からの厚岸湾での距離測定データを収集することができた。次に、GEONET(GPS連続観測システム)データから1996年4月から2003年9月の十勝沖地震発生前までの地殻変動速度を推定した。この地殻変動速度は、より長期間の験潮データによる上下変動速度と調和的であり、地震間の平均的な地殻変動速度と見なしてもよいことがわかった。この速度場をガウス型の空間補間を行なうことで水準点や三角点等での地震間地殻変動速度の計算を行い、測量データから差し引くことにより地震等に伴う地殻変動の抽出を行なった。さらに、断層すべり分布の推定プログラムを改良し、三角測量の観測量である三角点間の角度変化を直接扱えるようにした。これらのデータ補正手法、すべり分布推定手法を、1952年十勝沖地震を含む測量データに適用し、プレート間すべり分布の推定を行なった。その結果、1952年十勝沖地震のすべり分布は、2003年十勝沖地震とほぼ同じであることが明らかになった。 また、世界の他の沈み込み帯での地震発生過程や地殻変動の解析について情報収集を行ない本研究の参考とするため、中華人民共和国北京市で開催されたWPGM(西太平洋地球物理学会議)に参加し、関連する研究についての発表を行なった。
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