研究概要 |
水準測量や三角測量といった明治以降の測地測量データを解析して、千島海溝沿い南部のプレート境界域でのすべり収支を推定するために、H19年度においては、1973年根室半島沖地震(M7.3)の地殻変動とプレート間すべりの推定と2004年釧路沖の地震との比較を行った。 根室半島沖地震の地殻変動として、先行研究による三角・三辺測量の網平均により1966-1983年の歪分布が得られているが、地震の規模や最近のGPS観測から明らかになった地殻変動の大きさから言って不合理であった。そこで、網平均計算の条件を変えて再計算した結果、合理的な歪分布を得ることが出来た。このデータに加えて,水準測量,厚岸湾菱型基線測量等を用い,太平洋プレートの沈み込みプレート境界を矩形断層で近似して,プレート境界面でのすべりを推定した.得られたすべり分布は,本震の震央を中心としてすべり量の大きな場所が広がっており,すべり域の西端は釧路海底谷に達せず、50km程度東に離れていることがわかった.さらに、根釧地域において地震後1-2ケ月間に行われた水準測量データを用いて余効すべり分布を推定した.得られた余効すべり分布は,地震時・地震後すべり域の北端,西端に位置し,余効すべりが地震時滑り域の周辺域で発生したことを示唆すると考えられる. 2004年に発生した釧路沖の2つの地震(M7.1と6.9)に伴うGPSで観測された変位ダータから,2つの地震のすべり分布を推定した.推定された地震のすべり域は,根室半島沖地震のすべり域の北西端に隣接した領域に位置し,1973年の地震の際は,2004年の地震時すべり域を破壊していないと考えられる.この領域は,根室沖地震の震源域の西端を規定するバリアとしての役割が示唆された.これらの地震の発生域の比較により、この地域の地震テクトニクスや中・長期的な地震活動への理解が深まった。
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