千島海溝沿い南部のプレート境界域でのすべり収支を推定するため、H20年度においては根室半島地震以降の顕著な地震が発生していない期間について、光波測距、水準測量、GPSのデータ整理とプレート間すべりの推定、基準期間(1999年-2003年)のプレート間固着分布の推定、各期間のすべり量の積算による100年間のすべり欠損量の推定を行った。 まず、プレート間カップリングの推定では、1999-2003年の北海道東部のGPS速度ベクトルをデータとして、バックスリップモデルを用いた推定を行った。その結果、固着の強い場所は十勝沖と根室沖の2箇所にあり、これらの場所では境界がほぼ完全に固着していることがわかった。これらの場所は、それぞれ十勝沖地震(1952年と2003年)と1978年根室半島沖地震の震源域に対応している。これらの場所以外でも、プレート運動速度の半分程度の固着が、プレート境界の深さ80-100kmまで分布することが推定された。また、大地震の発生していない期間である1983-93年、1995-97年、1997-99年の各期間におけるプレート境界すべりの推定では、1995-97年に根室半島周辺域で20cmを超えるすべりが推定されたが、他の期間では顕著なすべりは推定されなかった。1995-97年のすべりは、スラブ内地震である1994年北海道東方沖地震によりプレート間すべりが誘発されたと考えられる。H18-19年度に行った地震を含む期間のプレート境界すべりの計算結果を合わせて約100年間のすべり収支を計算すると、十勝沖地震の震源地では、収支が小さいが、それ以外の領域では、広範囲にわたって数m分のすべりに相当する歪みが蓄積されている可能性がある。
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