初期のわずかな誤差が成長するカオス的な大気循環においては、1週間から1ケ月程度の時間スケールでの天候の予測には困難がつきまとう。一方で、この時間スケールの中高緯度大気変動には、空間的にいくつかの現れやすい構造があり、一括して「テレコネクション・パターン」と呼ばれる。総観規模擾乱との違いである長い持続性、大きな空間スケール、準定在性などの特徴はテレコネクション・パターンの予測が中長期予報を左右し得ることを意味している。 本研究は、東アジア域の冬の天候に影響するテレコネクションの力学とその予測可能性を調べることを目的としており、平成19年度は、それまでに得られた北太平洋におけるPNAパターンの力学過程についての知見を論文として発表した。また、日本付近の黒潮などの強い海流に沿って生じる海面水温変動が大気循環場へどう影響するかを、50km格子の全球大気モデルを用いたアンサンブル実験により明らかにした。この成果は、現在投稿論文として準備中である。 本研究では、観測データの詳細な解析および各種の大気モデルを用いた数値実験で大気長周期変動の力学を探求したが、その予測についてのさらなる知見を得るには、実験的な予報システムの構築が必要である。これは、平成20年度からの課題で取り組む予定だが、本年度後半にその準備的な作業を行なった。
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