今年度の計画では、「みらい」(海洋研究開発機構の海洋地球研究船)の平成18年8月の航海(航海番号MR06-Leg1)を利用し、宗谷海峡からオホーツク海に入り北上した後オホーツク海中央部を横切りオネコタン海峡から北太平洋へ抜ける航路に於いて、航走中にXCTD(投棄型塩分温度深度計)・XBT(投棄型温度深度計)観測を行い、同時に船舶搭載型ADCP(音響式流向流速計)データを入手することで、(1)北太平中層への沈み込みの起源域であるオホーツク海北部から流出・流入する熱・塩・海水輸送、(2)オホーツク海内部および千島列島域における鉛直混合、(3)航路沿いの海面混合層の熱収支、を評価するのが目標であった。しかしながら航海の1ヶ月程度前に、元々予定されていた航路で観測する許可がロシア側から下りないことが判明し、観測点および航路が変更された。代替航路は、むつ港から北海道十勝沖、津軽海峡、宗谷海峡、北海道オホーツク海側沖を経由して、オホーツク海中央部の公海へ向かい、ブソル海峡を経由してむつ港に帰港する航路で、そのうち観測許可が下りたのは日本の200海里領域内と公海である。航路の変更に伴い、目標(1)のための観測は実施不可能になったので、重点を目標(2)と(3)に移し、目標(2)のためオホーツク海内部(公海)でXCTD・XCP(投棄型流向流速計)観測を行い、目標(3)のため観測可能海域に於いて1日4回のXCTDまたはXBT観測を行った。その結果、オホーツク海の中層水形成および大気・海洋相互作用にかんして興味深い知見が得られたので、現在、解析を進めると同時に国際誌へ投稿準備中である。
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