北海道幌加内町母子里にある、当研究所融雪観測室において空隙内の存在する化学成分の採取を行った。積雪内に金属パイプを陥入しポンプによって空隙内の空気を吸引する方法と、フィルターフォルダーを直接積雪内に設置しポンプで吸引する方法で、空隙内のエアロゾル成分とガス成分をフィルター上に捕集した。エアロゾル成分はテフロンフィルターに、ガス成分は炭酸ナトリウム2%+グリセリン2%溶液をしみ込ませた濾紙に捕集させた。捕集したエアロゾル中の化学成分はフィルター毎超純水に浸し超音波を照射して超純水中に抽出させた。ガス成分は、フィルターを2%の過酸化水素中に浸し超音波を照射して抽出させた。抽出液は0.45um孔径のフィルターで濾過し、イオンクロマトグラフィーで化学成分の定量を行った。その結果、ガス成分しか存在していないと考えられていた空隙内にエアロゾルがある程度の濃度で存在する可能性が見いだされた。 当初予定していた札幌での観測は、例年にない暖冬のため札幌にある当研究所近傍の露場において乾いた積雪条件を得ることが不可能であり、行うことができなかった。 上述の実験では、積雪深がせいぜい2m程度の国内にて観測を行う限り、地面と大気からの影響を無視した条件で観測を行うことが難しい。そのため、十分な積雪深を得られる海外の氷河においての観測を実施するための予備調査を行った。予備調査を行ったのは、カムチャツカイチンスキー氷河とグリーンランド北西部である。前者の調査では総合地球環境学研究所で実施されているプロジェクトと連携し行った。後者の調査は現地滞在者に協力を要請し観測を行った。現時点では、それぞれの観測地に長短所があり、来年度に行う観測地点を決定するには至っていない。
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