大気と海洋の間の熱のやり取り(黒潮続流域を含む西岸境界流域などでの海洋から大気への熱の放出や太平洋の冷舌域での海洋への熱の吸収等)や海洋内部の熱輸送(熱帯域とその外側の熱のやりとり、インドネシア通過流による太平洋からインド洋への熱の輸送)が、どのように変動し、太平洋熱帯域の熱収支に影響を与えるのかを高解像度大気海洋結合モデル(SINTEX-F1)の結果を用いて調べた。 ・エルニーニョの発生に伴い、太平洋熱帯域の蓄熱量は減少することがわかった。これは、主に、海面熱フラックス偏差(特に短波放射)の減少と極向きの熱輸送量偏差(特にエクマン熱輸送と内部領域における地衡流熱輸送)の増加に伴うものであることが明らかになった。また、インドネシア通過流偏差は、反対の傾向を示し、エルニーニョ発生時に太平洋熱帯域の蓄熱量を増大させる方向に働いていることも明らかになった。 ・太平洋熱帯域の蓄熱量は、夏にピークを迎えるエルニーニョの際よりも冬にピークを迎えるエルニーニョの際の方が、大きく減少することが明らかになった。これは、季節変動に伴う背景場の違いにより対流活動偏差の大きさが異なることとインドネシア通過流を介したインド洋の影響が季節によって異なることによることがわかった。 ・以上、大気海洋結合モデル内で見られた太平洋熱帯域の熱収支の変動を観測データ及び同化データと比較したところ、整合的であることが確かめられた。 また、平成19年度以降の研究のため、中解像度大気海洋結合モデル(UTCM)のテストランを行った。
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