研究概要 |
東アジアの縁辺海であるオホーツク海、日本海、及び東シナ海の大陸棚斜面を沈降する密度流とそれに伴う物質輸送に関する研究を昨年度に引き続き、以下のように基礎的な力学過程と現実的な条件下における力学・海水混合過程の両面から行った。 先ず、東アジアの中緯度域に相当する地球自転率のもとにおける海水沈降の力学について、高緯度域における沈降過程との相違を明瞭にさせながら、その実態を総合的に議論・考察した(田中,2008等)。 また、各縁辺海域における具体的な実態を推定するためのストリームチューブモデルの開発に従事した。現実的な状況を通常の(プリミティブ方程式系)大循環モデルで再現するには莫大な計算機資源を必要とするが、本研究ではストリームチューブモデルを使用することで、現実的な計算機資源の範囲内で、バルク量ではあるものの十分に現実的な知見を得ることを目的としている。一次元の運動方程式や密度の移流拡散方程式から成る連立常微分方程式をアダムス法を用いながら解くことで、沈降海水の流量変化や背景場の海水との混合による密度変化、沈降経路等の物理量を計算する。 同時に、日本周辺域における品質管理済み海洋内部データ(MIRC OCEAN DATASET 2005、海洋情報研究センター)や日本周辺域における高分解能大気観測客観解析データ(MANAL、気象庁)、オホーツク海における海氷観測データ(海氷観測資料、気象庁)、全球長期再解析データ(JRA-25、気象庁と電力中央研究所)等のデータを用いて、観測資料の解析も進めた。 上記の数値計算や資料解析には本課題で購入した計算機サーバや、所属機関保有の大型並列計算サーバを利用した。
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