初年度は、主にプログラム開発に費やされた。大気海洋結合モデルMIROCと領域気候モデルJMA/MRI NHMは共に巨大なプログラムコードであり、それらとの整合性を確保しながら双方向ネスティングを実現するには、相当の労力を必要とした。しかし、その結果、初年次にして概ね双方向ネスティングシステムは完成した。初年度の計画では、一方向ネスティング実験を整備することが目標であった。従って、初年度の研究到達度は200%に届かんとする勢いである。作業は以下の手順で行った。 1.MIROCは、大気モデルと海洋モデルについてMPMD方式で並列化されている。ここではNHMを大気モデルとSPMD並列化することにした。つまり、MIROCの大気モデルメインルーチンに、NHMのメインルーチンをサブルーチンに書き換えたものを呼ぶ。また、NHMのファイルは必要なものだけを切り抜いた。 2.また、NHM内のコニミュケータを大気モデルに使っているコニミュケータに書き換えて、MPI部分の整合性を確保した。 3.出入力は親ノードでのみ行う。MIROCからNHMへ水平鉛直方向の補間を、NHMからMIROCへデータの平滑化を、それぞれ行うプログラムを整備した。データのやり取りは主にメモリで渡すようにし、プログラムの高速化を図った。 4.コンパイルに際し、NHMで使われていた最適化オプションは基本的に削除した。それによって実行速度は1割程度の遜色しかなかった。 現在、日本を40km格子の領域モデルで双方向ネストする試験と、北海道を10km格子の領域モデルで双方向ネストする試験を完了している。また、インドネシアの海洋体陸上を双方向にネストした実験では、MIROCなど大気海洋結合モデル特有のdouble ITCZバイアスが若干軽減される様子も見て取れた。次年度以降、これに基づいて続々と科学的研究成果を出していくつもりである。
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