本研究は、全球大気海洋を計算する大気海洋結合モデルと一部の領域の大気を計算する領域気候モデルを結合し、双方向に情報を交換しながら計算できるシステムを構築することが目的である。その結果、小規模の気象現象が気候に及ぼす影響を比較的小さい計算コストで研究することができるようになると期待される。本年度は、双方向ネスティングと一方向ネスティング(システム上、大気海洋結合モデルと領域気候モデルの結果が同時に出力されるが、領域気候モデルの結果は大気海洋結合モデルには反映しない)のプログラムコードとしての確定と、その利用上の問題点を洗い出すことにある。双方向ネスティングシステムそのものは、今年度半ばまで非常に多くのバグ(プログラム上のミス)があり、そのバグを除去することに非常に多くの時間を費やした。気象研究所斎藤和雄博士の洞察力ある助言によって、気候的にも気象的にもおかしな計算がなくなり、計算が途中で破綻することもなくなった。これに多くの時間を費やしたため、研究の達成率としては100%であるが、追加の実験は殆んど行っていない。また、昨年度に完成した一方向ネスティングシステムを使い、日本付近をネストした実験を試みた。その結果、冬季の南岸低気圧の再現が領域モデルの方が大気大循環モデルよりよいことが分かった。日本列島や沿海州の地形が重要な役割を果たしているに違いないが、その解析はいまだ行えていない。来年度における研究完成に目処がついた形となった。
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