地球大気において水蒸気の気象現象への影響は非常に大きいことが知られている。本課題では今まで申請代表者が開発を進めてきた大気レーダーを用いた水蒸気推定法を発展させ、実際の気象予報モデルに同化することで予報精度向上を目指す基礎技術の技術開発を行うことを目的としている。数値予報モデルのデータ同化手法である変分法に着目し、大気レーダーを用いた水蒸気推定手法に変分法を組み込むようにアルゴリズム改良を行う。 大気レーダーの乱流エコー強度は主に大気屈折率の高度変動(M)の二乗値に依存することが知られている。また、Mは湿潤大気中では主に水蒸気の高度勾配により決定されることがわかっている(Furumoto et al.2001)。この関係を利用することで大気レーダーエコー強度から水蒸気プロファイルを推定する。ところが大気レーダーから得られるのはM^2であるためMの符号がレーダー観測からは決定できない。この符号の決定をより精度良く行うことを目的として1次元変分法を応用したアルゴリズムを開発した。同時観測されたGPS可降水量を同時にデータ同化することでMの符号に拘束をかけ符号が推定を行いやすくした。なお解くべき最適化問題は多くの局地的最小値を持つため遺伝的アルゴリズムを用いることで最適化した。MUレーダー・RASS観測データを利用して推定を行った結果、従来の方法と比べて精度が向上することを示した。なおノートブック型PCを1台購入しこの解析に利用した。本結果は、国際論文誌に投稿しすでに受理されている。
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